丹後人図鑑

Interviews

『 空き家のリノベからつくる、丹後での暮らし 』

blueto建築士事務所 代表

吉岡 大 さんDai Yoshioka

Uターン 丹後人歴:18年+2009年~

京丹後市丹後町出身。
独特な言い回し"だい語"で話す大ちゃん。言葉のチョイスも写真のセンスも抜群です。
丹後暮らし探求便にも素敵な写真を何枚も提供している大ちゃんの本業は、空き家活用。
自身も築約150年蔵つき古民家をリノベーションしてオフィス兼自宅にしている、丹後でのリノベの心強い味方です!
blueto建築士事務所 https://blueto.jp/

毎日同じことの繰り返し、都会が合わないと感じた。

大阪で1年間、建築設計事務所で働いていました。友達もいなく、家と職場の往復だけの上、朝から晩までマンションの図面をひたすら描き続けるという仕事でした。
また、都会は人が大勢いるのに顔見知りに会えなかったのですが、丹後に帰ってくるとどこに行っても同級生や知り合いがいる安心感があり、帰ってくることを決めました。

当初、仕事はハローワークで探し、工務店に勤めました。
大阪では設計の仕事だけでしたが、工務店では現場監督、営業監督、企画・設計などいろんなことをさせてもらえ他のですが、それに加えて資格の勉強もしていたので、まるで修行僧のように働き方で、丹後に帰ってからもなんだかんだ家と仕事の往復でした(笑)

丹後の暮らしを楽しんでいる人々に出会い、可能性を感じた。

休日はDVDを観て過ごすことが多かったのですが、5年もすると、だんだんそれも飽きてきてしまいました。そんな時に、次の資格試験まで間が空き、土日でおもしろいことないかな?と思っていたら、新聞に入っていたチラシでワークショップの参加者を募集していて、面白そうなので、参加してみました。

ワークショップでは、若い人がたくさん参加しており、丹後での暮らしを楽しんでいるのが羨ましくさえありました。そのうちの一人、長瀬啓二さん(丹後人図鑑参照)にミクタン( mixひとびとtango の略)などいろんなイベントに誘ってもらい、そういう機会を通じて、丹後の可能性を感じられるようになりました。

また、そのワークショップで自分のやってみたいことを話す機会があり、「空き家を活用したい」と言うことを話しました。実はその頃、工務店の社長にも空き家活用について相談をしていたのですが、そちらはあまり乗り気ではなかったため、自分でやるしかないと思っていたタイミングでした。
色々な人に相談をしはじめると、トントンと話が進むようになり、今まで勉強をしていたことも後押しして、1件目の空き家「桃山ノイエ」の購入に至りました。

「空き家を活用」して生まれる繋がりを実感

桃山ノイエは、後に小林朝子さん(丹後人図鑑)が住むことになる物件で、地域の人も呼んでワークショップをしました。空き家を活用しようと行動するだけで、物件を通じてたくさんの人と繋がることができると感じるきっかけになりました。
人と人が出会う、外から人を呼べる場を作れれば、それが自分の仕事にできるんじゃないかとの想いが強くなる中、ミクタンで桃山ノイエを住みびらきした時に、京都市でフリーランスの仕事をしている人が訪問してくれました。話すうちに、自分で働き方を選択するという未来に可能性を感じるようになりました。
ちょうどその頃、勤めていた工務店の長期ビジョンを社員で考える機会があり、考えれば考えるほど、会社のビジョンと自分のやりたい仕事の矛盾が大きくなり、結果独立することを選択しました。

空き家と向き合う仕事。京丹後の空き家事情。

2016年に暮らしのリノベーションblueto建築士事務所を立ち上げ、住まいの設計や空き家のリノベーションを行いつつ、自らも空き家物件の運営事業をしています。
リノベーションの相談は年十数件の需要があるのですが、空き家の購入後と今住んでいる家をリノベーションしたいという相談、どちらもあります。
また、空き家がないですかという相談もありますが、それにはなかなか応えられないのが現状です。
より多くの空き家をきれいな状態で次の人に引き継げるかが自分の中の課題だと思っています。それには、家主さんの気持ちをどのように持っていけるかが重要です。家は先祖からの資産なので、3回忌が終わってから…いや、7回忌のあとに…ということもよくあり、空いてから早いうちに使うという意識に変えていくのが難しいです。

自分の感覚としては、100件の空き家のうち使えそう空き家は10件、さらにピンとくる空き家はそのうち1件。つまり、100件みていいと思う物件は1件です。
判断基準は、屋根の瓦、基礎など家が長持ちしそうであることですが、ただ景色や環境などロケーションが良ければ、家の状況が多少悪くてもどうにかなります。
空き家の購入は、もし借りる人がいなくなったときに、自分が住みたいと思えるかを大事にしています。物件を複数持つことで、UIターンで家を探している、仕事をやりたい人に挑戦の場を提供できるので、声がかかれば足を運び、たくさん物件を見るようにしています。

今起業してから、いろんなものが見えてきて、ただただ楽しいという所から、未来をどうするかということを考えるフェーズにきています。
丹後は努力しないと消滅可能都市だと思います。それをどう残していくか、自分は何ができるか?大宮町の三重森本地区で里の公共員をやっていますが、補助金などでイベントを単発しすぎると地域が疲弊してしまうので、ビジネス感覚や、外貨を稼いで自分たちでまちを良くするという発想にシフトできるよう運営できるスキルや仕組み作りをしていかなければならないと思っています。

都会で消費する暮らしより、田舎で持続可能な豊かな暮らしを選択できるように。

今、オフィス兼住宅として購入&自分たちでリノベーションして暮らしている家は、蔵付き物件ですが、お仕事で蔵のリノベーションに関われたことで、活用できるイメージができたので、購入に至りました。それがなければ絶対購入していませんでした。
なので、空き家活用のイメージが持ちやすいよう、空き家の活用方法や暮らしのモデルハウスになれたらと思います。
休日は、奥さんとの出会いとなった丹後町の袖志の棚田の田植えや稲刈りイベントや、フリマの出店など、イベントも楽しみつつ、家の敷地で田舎の暮らしの良さを体感しています。
都会では、マンションに住み、ものすごく働いて、お金をいっぱい払って暮らしていましたが、田舎ではマンションの一室ではできないような持続可能な暮らしが出来ると思っています。今はせっせとミカンやモミジを植え、その成長を楽しみにしています。

“とっておきの1枚”

袖志の棚田 田植え

私ごとですが、令和元年5月1日に入籍しました。この写真は、僕の妻と初めて出会ったきっかけとなる袖志の棚田。妻はこの丹後の原風景に惹かれて、奈良県から丹後へ単身移住をしてきました。僕も丹後の海と空と山の風景が大好きです。blueto建築士事務所を開業 したのも、この丹後の風景を残したい、多くの人に知ってほしいと思ったことがきっかけです。

撮影場所:撮影場所:blueto建築士事務所(弥栄町)