丹後人図鑑

Interviews

『 「英語」×「丹後」、自分の「好き」で人をつなぐ 』

Tangonian 代表

長瀬 啓二 さんKeiji Nagase

Uターン 丹後人歴:18年+2010年~

京丹後市網野町出身
「旅は“日常”と“非日常”の交差点」をコンセプトに、外国人旅行者へ ローカルならではの出会いと体験の提供、おもてなしをサポートする “Tangonian”を2018年1月に設立。丹後のワクワク案内人!?
http://tangonian.com/

地元だから帰ってきた。ただそれだけ。

京丹後市には大学卒業後にUターンし、京丹後市内で中学校英語講師、綾部市で中学校英語教諭に就きました。その後、25歳で仕事を辞めて再Uターン。その頃は、どういう暮らしがしたいということもなく、地元だから帰ってきたという感じでした。ただ、大学時代に京都市で暮らす中で、人混みが落ち着かず、喧騒の中よりも地元の八丁浜の美しい海や綺麗な星空をぼんやり見ている時間がとても居心地がよく、自分に合っているというのは感じていました。退職後、実家に戻りハローワークで仕事を見つけるまでは、家で本をひたすら読んだり、映画を観たり、テニスをしたり、という暮らしでした。

面白い人がたくさんいる、それに気付く出会いがあった

次は大学生の頃から興味のあった福祉に関わる仕事をやってみたいと思っていたところ、幸運にも地元の社会福祉協議会で職を得て、働き始めたのがきっかけでより深く福祉という分野に触れ、地域の方とかかわるようになりました。その頃に出会ったのが通称「ミクタン」(mixひとびとtango※)というイベントでした。その頃から自分の中で地域愛が生まれはじめました。

例えば会社員として働いていると、「仕事上のお付き合い」という枠組みの中で人間関係が完結してしまうのですが、ミクタンでは、枠組みを超えて面白い人に出会え、その人達に会って話をするというのがすごく刺激的でした。こんなに面白い人達がいる丹後に魅力を感じ始めました。

※mixひとびとtango   http://www.mixtango.com

人に会いに行く。休日の過ごし方が変わりました。

それからは、遊び方が変わりました。以前は休日になるとテニスの試合に出るぐらいしか選択肢がなかったのですが、ミクタンで出会った人の工房にプライベートで見学に行かせてもらったり、炭焼き窯で炭出し体験をさせてもらったり、お金を払って遊ぶのではなく、丹後の中で知っている人に会いに行くようになりました。

その頃から外から来る人と関わるようになり、自分が出会ってきた面白いと思う人を知ってもらいたい、自慢したい!と紹介・案内するようなりました。

丹後の魅力を「自慢したい」を仕事に。旅をデザインする。

丹後ちりめんや地酒など、自分自身が心から誇れて自慢したいと思う丹後の魅力を、丹後を旅する人…特に外国人の方にもちゃんと知ってもらい楽しんでもらいたいと次第に思うようになりました。

そんな想いもあり、社会福祉協議会を退職し、観光の仕事に就きました。ただ、目玉となる観光コンテンツを開発し観光客を何十万人に増やすという目標よりも、外国人旅行者の方、一人一人が旅に求めている価値観が異なる中で、歴史や文化、伝統産業や暮らし、地元の方とのふれあいなど、この地域でしかできない新たな旅の楽しみ方をデザインして提案することで、もっともっと外国人旅行者の方に楽しんでいただけるのではないかと思い起業しました。

「好き」がチャレンジの原動力。

どうせ失敗するなら好きなことにチャレンジして失敗するのがいいと思う。マーケティングやリサーチも大切ですが、自分のモチベーションを保ち続けるためには、自分の「好きだと感じること」が一番の原動力になるので、それをやってみればいいと思います。僕の場合は、それが「英語」と「丹後」でした。

自分で事業を立ち上げてみて、最初はこれがうまくいくのではないかと思っていたことが意外とうまく回らなかったり、逆に考えてもみなかったところから、話が来てうまく回り始めたり、やってみないとわからないことがいっぱいありました。うまくいかないときや苦しいときでも、「好き」なことであれば心が折れずに踏ん張れる。そんなふうに思っています。

僕は、創業300年以上続く丹後ちりめんを作っている事業者でもなければ、新鮮で美味しい海や山の幸を提供できる漁師や農家でもない。僕自身は特別で何かすごいことが出来るわけではないけれども、ガイドとして、丹後という地で連綿と続いてきた歴史や文化を紡いできた魅力的な人生の先輩方や面白い人達の間に入って、ゲストとまちを繋がせてもらっている。ただ、このまちが秘めている価値を遜色なく伝えるために、自分自身もその価値についての知識を深めたり、伝えるための編集力や言語能力を常に磨き続けないといけないと感じています。

今後は、外国人の方×地元の方(おじいちゃん、おばあちゃんや学生など)が出会って暮らしの知恵や生き方、伝統などをお互いに共有でき学び合える機会を創っていきたいと思っています。今まで人生で交わらなかった人と人が出会ったときに起こる化学反応、そこに立ち会える奇跡にいつもワクワクします。
これから僕自身、外国人の方と一緒に働く中で多様性のある会社や多様性のあるまちを仲間と一緒に創っていきたいと考えています。限られた人生の時間の中で、どうせなら自分の好きなことを好きなまちでチャレンジしていきたいと思っています。

“とっておきの1枚”

丹後ちりめん祭りにて♪

アメリカ人の友人と着物を着て写真撮影。 僕の着物は祖父・父から受け継がれた一張羅。まだ着こなせてないけれど気持ちに一本の芯が通る感じが心地いい。 人生で初めて着物を着たという友人の誇らしげな顔、地元の方と一緒にちりめん音頭を踊る姿。世界と丹後が、人と人が交差する、かけがえのない大切な時間。 そんなとき、しみじみと実感する。あぁ、やっぱり丹後で良かったなと。

撮影場所:八丁浜(網野町)、kanabun(網野町)