丹後人図鑑

Interviews

『 お互いの地元で二拠点活動する、贅沢な働き方 』

フォトグラファー

池田 昌広 さん / 亜沙美 さんMasahiro Ikeda / Asami Ikeda

関係人口 丹後人歴:昌広さん:2015年〜 / 亜沙美さん:1987年〜

長野県木曽郡大桑村出身の昌広さんと、京丹後市久美浜町出身の亜沙美さん。
亜沙美さんの実家はヒラヤミルクでおなじみの平林乳業。
おふたりは「Tolocca」として、結婚式や七五三など家族にまつわる写真を中心に
丹後・長野の二拠点のみならず全国で活動されています。
おふたりの撮る丹後の写真にはいつも感動がたくさん詰まっています!
・Tolocca http://tolocca.com/
・MasaHiro IKEDA Photography http://masahiro-ikeda.com/

牧場がつないだ、丹後と夫婦の縁。

【昌広さん(以下:昌)】もともと妻亜沙美が久美浜で生まれ育ったので、その友人や知り合いの家族写真や結婚式の撮影の依頼があり、丹後での写真の仕事はそんな形ではじまりました。そのつながりから、現在では京丹後市内にある中小企業や行政関係者から写真や映像撮影を依頼されるようになりました。

【亜沙美さん(以下:亜)】私たちは従兄弟の紹介で知り合ったのですが、その前から夫は、大学の授業で私の親族の牧場や工房での実習をしたりして、丹後で過ごしたことがあったそうで、この地には馴染みがあったみたいです。

【昌】僕の通っていた京都工芸繊維大学は京丹後市とのつながりが深く、網野町にキャンパスがあり、産学官連携なども流行っていた時期でした。そこで「京丹後プロジェクト」という、例えばちりめんを使って世界に発信するにはどうするかなどを、学生、地元企業、行政のみんなで考えようというような取り組みがありました。
いくつかの地元企業の中から僕は「丹後ジャージー牧場 ミルク工房そら」さんでの実習を選んだのですが、そらのカフェを立ち上げるにあたって、どうブランディングして付加価値を高めていくかなどを一緒に考えたりしました。

その時のプレゼンテーションが京丹後市や京都府でも取り上げられ、最終的には大学や、東京の学会などでプレゼンしたことで、そらの方々にも自分のことを覚えてもらっていたというのがきっかけとしては大きかったんですかね。それにしても何年も経ってから、こうして紹介を受けるとは思っていませんでしたが笑

【亜】私は当時、勤めていた会社を辞めてカメラマンになりたいと思っていたのですが、せっかくなら転職のタイミングに海外を見て回ろうと思っており、それを叔母であるそらの文子さんに話したところ、従兄弟であるそらの学兄ちゃんが「僕の知り合いにカメラマンがいるから、ヨーロッパに行くなら会ってきたら?」と紹介してくれたのが夫でした。
実は夫は一時帰国していたため、結局は日本に帰ってきてから知り合ったのですが笑、すぐに意気投合し、一緒に仕事をするようになりました。
この縁がなかったら丹後で写真の仕事をするなんて考えもしなかっただろうなと思います。

お互いの田舎を結ぶ、贅沢な仕事の仕方。

【亜】まだ丹後にいるときに、友人の家族写真を趣味で撮っていたのですが、その際に『親子』の写真を喜んでもらえるという経験をしました。はじめのうちはこういうのを仕事にしようとは思っていなかったのですが、やりがいがあるなという思いはありました。
夫と出会って一緒に仕事をするようになってから、私はどんな仕事がしたいかと聞かれたときに、「お客さんに喜んでもらえる仕事がしたい」と思うようになりました。そんな想いから、2015年に夫と一緒に立ち上げたのが、『Tolocca(とろっか)』です。

【昌】その時のことは自分も非常に印象強く覚えています。僕はもともと海外で活動をしていて、その時はファッションの写真や、ミュージシャン、ダンサーなどの撮影の仕事がメインだったのですが、日本に帰って来てからは田舎での暮らしだったので、全然違う仕事をする必要がありました。
最初は慣れない家族写真や結婚式撮影などの仕事に対して戸惑っていたのですが、お客様に想像以上に喜んでもらえたことに大きな喜びを感じたんです。
その後すぐに、もっと喜んでもらいたい、写真を撮る文化のない地域に写真文化を定着させたい、地方の中小企業相手にも小回りの効く質の良いサービスを提供したい、という思いが湧いてきて。

たまたまお互いの出身地が、ものすごく山側と、ものすごく海側だったので、行ったり来たりできたら面白いし、間には大阪、京都、名古屋といった大都市もあるので、仕事はなんとかなるだろうと思ってました。
田舎に暮らしながらたまに都会に出て働く、そういうスタイルにできたら贅沢なんじゃないかと思ったんです。田舎暮らしも山と海と、二箇所でできるわけですしね。田舎の人たちって良くも悪くもそれぞれが独特で面白いので。
それからの仕事は徐々に地方ベースにシフトしていきました。

カメラを通して感じた丹後の魅力。

【亜】撮影場所を選ぶ際、有名なところを希望される方が多くて、例えば「京都だったら祇園」みたいな。人が多いところはいろいろルールもありますし、撮影側も大変なのですが、丹後だったらどこに行っても人が少ないし、ロケーションもとても豊富!素敵なところをたくさん知っているので選び放題なんです。自然の中で撮るという選択をするなら、丹後は本当におすすめです!近い場所に海も山もあり、ゆっくり過ごせて誰にも邪魔されないです。笑

【昌】丹後の特徴は、地元の人も移住の人も、皆さん丹後のことが好きなところですね。
他の田舎に行くと、たとえ地元に良いスタジオや良い撮影場所があったとしても「地元はダサいから、都心部に行ってもっとオシャレに撮りたい」と言われたりすることが多いんです。丹後人の「地元で撮りたい」というのは珍しいし、すごく良いことだと思います。

【亜】そうそう。丹後の方から依頼される撮影は、ほとんど京丹後市内での撮影が多いんじゃないかなと思います。これって普通ではなくて、多くの方はやはり都会でオシャレなスタジオに行きたいとか、有名な観光地で撮りたいって人が多いんです。私たちの住んでいる長野県だったら「地元じゃなくて軽井沢に行きたい」とか。地元で撮ることが選択肢にあんまりない感じ。丹後の人の郷土愛はとっても素敵だし、好きですね。私も丹後が大好きです。

地域づくりのための「ダシ」になれたら。

【昌】僕たちは実際に地域づくりをするわけではないのですが、僕たちの活動は地域づくりをするためのダシのようなものだと思っています。妻の実家のヒラヤミルクも北近畿では絶大な人気と認知があって、丹後という地域自体のブランディングの一端になっています。そういうことをToloccaでもやっていけたらと考えています。

【亜】丹後ならこういう素敵な写真が撮れるよ、というのを広めていけたらと思っています。地域のつながりを活かし、深い関係の上に写真のサービスを提供していけたらお客さんも安心しますし。私たち自身が丹後の中の方にも、外から来る方にも、自信を持って紹介していただけるようになりたいですね。

そして「地元にこんな良い景色があったんだ」「京都にこんな素敵な街があったんだ」と、お客さんに満足していただけたらいいなと。
そうやって丹後が “ わざわざ来てもらえる場所 ” になればいいなと思っています。

【昌】最近、丹後の地元の方とも仲良くなり、いろんな情報を教えていただいていることもあり、今まで知らなかった素敵な場所での撮影もできるようになりました。
「地元で写真を撮るのがかっこいい」が定着したら素敵ですよね。
例えば外国人は京都が好きですが、京都市内じゃなくて、丹後で撮るのがクール!みたいな。そんな風に思っていただける丹後をめざして。そういった提案も含めてToloccaの活動で見せていきたいですね。

“とっておきの1枚”

丹後の魅力、ちゃんと伝えてます!

丹後には、写真家にとって魅力的な風景が沢山あります。 先日、私たちの住む長野県にて写真展を開催したのですが、丹後の写真を沢山展示しました。 「京都にこんなにも穏やかで美しい自然があるなんて知らなかった。行ってみたい。」という声が多く、とても嬉しく思いました。 これからも定期的に丹後に通い、写真を通して少しでも多くの方に、その魅力を伝えたいと思っています。

撮影場所:平林乳業(久美浜町)、ミルク工房そら(久美浜町)