丹後人図鑑

Interviews

『 自分の生まれ育った土地で、家をつくること 』

U設計室 代表

大垣 優太 さんYuta Ogaki

Uターン 丹後人歴:18年+2010年〜

京丹後市網野町出身
ニックネームは”ガッキー”。
一人一人の想いに向き合いながら、丹後の環境に合わせた建築を提案することが得意。
じっくり時間をかけて暮らしに向き合った家や建物を建てたい場合は、まずはガッキーに相談してみると良いかも。
https://www.u-arc.net/

憧れの建築家と一緒に働くために帰ってきた。

僕の出身は網野町なのですが、北海道に尊敬する建築家集団がいて、そこで建築の修行をするために一度丹後の外に出ました。そんな折に、その集団から独立して丹後で設計事務所をしている方から「一緒に仕事をする環境が整ったので帰ってこないか?」と声をかけていただき、元々、その方に憧れて建築家を目指したというのが大きかったので、丹後に戻って働くことになりました。

帰ってきてから実際に働いた期間は2年なのですが、北海道に行く前に、京丹後市内のゼネコンにいて、そこに居ながら2年ほど土日に通わせてもらっていたので、合計すると4年ほどお世話になりました。

その方は宇川温泉を設計した建築家さんなのですが、風土を大事にされている方で、宇川温泉を設計するにあたって、2年間宇川の地区に入って、その地区の風土の調査だったり、地域に住んでいる人々の生活の調査をしてから、設計を始めるというやり方をしていました。
それはいま僕がしているU設計室でも、とても大切にしていることでもあります。

“その人をかたちにしていく”という仕事。

起業しようと思ったのは、単純にやりたいことができるからですね。
起業する前は、主に公共事業をやっている事務所にいたのですが、誰のために設計しているかというのがすごく曖昧になってしまっている様に感じられて…
例えば中学校の改修をするという時に、打ち合わせをさせていただくのは、市の建設部の方や教育委員会の方々であったり、実際その空間で生活する生徒でもなければ先生でもなく、それが、僕のやりたかった「その空間を使う人のための設計」とはすこし離れていました。
個人の住宅というのは、まさにその人の想いをかたちにしていくという仕事になるので、起業して自分の本当にやりたい家づくりをやろうと思いました。

U設計室が大切にしている2つのこと。

U設計室は、2016年8月からはじまった、「日常と風景に寄り添った家づくり」をテーマにしている設計事務所です。

日常というところでは、その人の生活であったり、実際にそこで営まれる日常を作っていくということにフォーカスしてい流ので、設計する段階で、いま住まれている住居に伺って、持っているものや好きなもの、色の嗜好、家事の動線などを調査します。
風景に寄り添うというところでは、隣の住宅との目線や、庭を取るにあたって道路からの距離や、風がどこからどこへよく吹いているのかなど、風土に合った家にできるように工夫します。
この2つを特に大切に、主に住宅の設計をしています。

丹後の風土に合った家づくり。

丹後という土地柄、設計をする際、気候風土にはすごく気を使っています。

例えば、土地を買う段階から相談を受けることもよくあるのですが、冬は道路に除雪が入るのか、何時に入るのか、駐車場計画にあたってどの位置に計画するのが積雪時に出やすいのかなどは気を使います。積雪荷重という屋根に積もる雪の荷重が、丹後は1m50cmなので、雪に耐えうる屋根の設計にしなければいけないなどを注意しています。

また、海沿いの地域に立てるのであれば、海風が夏は海に向かって吹き、冬は海から吹いてくるなど、時期に応じて扉や窓の開け閉めの期間を考えたり、光の入り方に関しても、丹後は特にうらにし(※丹後地方特有の雨が降ったりやんだりする不安定な気候)があり日照時間が極端に短い地域なので、隣家の高さなども調査して3Dでシュミレーションを行い、何月頃にどこが影になるかなども検討します。

こう聞くと丹後で住宅を設計するのは大変そうに感じるかもしれませんが、自分の生まれ育った土地なので、自分にとっての当たり前を表現していくと風土に合ってくるということが、丹後で設計事務所をしている意味が大きいなと思っています。

子供と家。自分の建築スタイル。

都会と違って、近くに子供の遊べる場所があるわけじゃないので、家づくりでは、家の中の環境や家から少し出た庭の環境を、できるだけ休日にゆっくり過ごせるような場所にすることなどを意識しています。また、自然に外に足が向くような造りにすることで、大人も子供も外で遊んでくれるようにと考えたりしています。
うちに設計を頼んでくださる方は、そういった子育てや自然と触れ合うことを大事にされている方が多いですね。

また、自分の建築スタイルに共感してくださる方からのご依頼はもちろんとても嬉しいのですが、逆にスタイルと合わないご依頼でも、新しい勉強になって設計に厚みが出てくるのですごく楽しいんです。
施主さんのバックグラウンドというか、今までどう生活してきて、どういう家が欲しくなったのかを掘り下げていくのも楽しくて、施主さんの趣味を勉強するための本も買ったりします。笑

休日は家族と過ごしています。網野のシーサイドパークや峰山の途中ヶ丘公園などに遊びに行ったり、最近は家の裏山の愛宕山でもよく遊びますね。

丹後で建築業をめざす人へ。

丹後の人は良くも悪くも、良いものは良い・悪いものは悪いでしっかり判断してくれます。良ければ良い噂を流してくれるので、(悪ければ悪い噂を流されちゃいますが笑)真面目にその人の最大限の利益になるかたちを頑張ってつくり上げるというやり方をしていけば、しっかりお客さんがついてきてくれるのかなと思います。

都会だから、田舎だからというのはあまり関係なくて、うちも兵庫県の方に構造を手伝ってもらったり、遠隔地の方と一緒に仕事ができているので、都会の仕事が入ってきても十分やっていけると実感しています。
もし丹後で設計をやりたい若い人がいたら、ぜひうちに来てください!若い人の感性から一緒に勉強していきたいですね。

“とっておきの1枚”

自然の中で田植え

奥さんの実家が網野の山奥で田んぼをしているので、家族で田植えと稲刈りをご一緒させてもらっています。長い冬が終わって一番気持ちの良い時期に、少し冷たい田んぼに入るのが最高に気持ちいいです。小さい子はカエルやサギなどの生物観察で、長男はお手伝い。丹後の自然を感じられるこの時期が毎年の楽しみです。

撮影場所:U設計室オフィス(網野町)、施工現場(大宮町)