丹後新聞部

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2022.12.21

【開催レポ】はじめてのお店 in 島津

2022年11月23日(祝)のこと、網野町にある島津ふれあいセンターには、冷たい雨の日とは思えない人だかりがありました。

朝からたくさんの家族連れが集った理由は、第一回の開催を迎えた「はじめてのお店」のイベントです。「はじめてのお店」の名前の通り、店長を務めたのは、島津地区のこどもたち。島津小学校に通う子どもたちに「お店屋さんをやりたい人、集まれ〜!」と応募用紙を配布して、子どもたち自ら、どんなお店を開くのか考えるところから始まった試みでした。

開催の背景〜しましまベースの発足〜

イベント「はじめてのお店」が開催された背景には、島津地区の地域の方を中心に発足された チーム「しましまベース」の熱意がありました。ここで「しましまベース」発足の経緯をご説明します。そもそも2019年冬のこと、島津地区の区長さんから「地区への移住を促すためにWEBサイトを作りたい」と丹後暮らし探求舎へ相談が舞い込んだことから、2021年春にプロジェクトが始まりました。

しましまベースメンバーの集合写真


移住を促すWEBサイト制作の依頼について区長さん達との相談を重ねた結果、「WEBサイトを作るためにも、”移住者を募る”という目標に向かうためにも、まずは今住んでいる人たちが、地区の魅力を知ることが大切だよね」と目指すべき方向性が一致して、自治会の方々と共に、島津地区に居住する小学5年生以上の年齢の方を対象とした住民アンケートを実施しました。アンケートを通じて「島津の良いところ、自慢したいところ」等を尋ねていった結果「地域がより良くなるために、何かやってみたい意向はありますか?」との質問には、約20名からの署名が集まり、有志で”しましまベース”のチームが発足されたという経緯です。

目指すは子育てする家族が住みたいと思えるまちづくり

今まで住民アンケートやワークショップなどを重ねてみた結果、島津地区の特色として「保育所と小学校が隣接していて、子どもたちが通う場所に”面”としての繋がりがある」「子どもの人数が、今の所一定以上に保たれていて統廃合されておらず、地区内の小学校へ通える」など、子育て中の家族にとって魅力的な点がいくつか浮かび上がってきました。よって島津地区では「子育てする家族が住みたいと思えるまちづくり」を特長として伸ばしていくことを目指しています。

そして「この地区は、実行のスピードが特長です!」と語るのは、しましまベースの主幹を担う三野(みの)さん。当初、島津区長として丹後暮らし探求舎へWEBサイト制作の相談を持ちかけてきた張本人です。

三野さんの声かけで動き始めたしましまベースメンバーの尽力によって、発足された2021年のうちに畑を借り、地区の子どもたちの体験の場となるシェア畑「しましまファーム」が立ち上がり、植え付け&収穫とその年度内に2回のイベントが開催されました。小学校や保育所と隣接するしましまファームでは、ひまわりオーナー制度で種まき体験を企画したり、皆でさつまいもを植え付けして、子どもたちが登下校中に日々、植物の成長を観察したり、ご近所の方と共に、植物のお世話をする集いの場になっています。

そして、子どもたちの元気な顔を見たいと、近所の大人たちも有志でファームのお世話、キッチンガーデンづくりに関わっています。

しましまファームの活動記録はこちら

2022年秋から始まった「はじめてのお店」

しましまファームの活動に続いて2022年に始動したのは、この度第一回を迎えたイベント「はじめてのお店」その名前の通り、小学校高学年以上を対象に「お店屋さんをやりたい人集まれ〜!」と応募を募って、子どもたちが店長を務める体験の機会を設けました。

昭和の半ばには約90軒の商店があったと言う島津ですが、現存している店舗は2〜3軒ほど。多くの地域と同じく島津においても、買い物の用事があると、近くの街まで行く場合がほとんどです。もっとも島津は車で10分〜15分程度で大きなスーパーへ行けるため、買い物環境が不便な立地ではありません。

しかし、地区に商店がたくさんあって、実家や親戚、ご近所さんが自営業をしていた時代と比較して、子どもたちが「商い」に触れる機会は減っています。そんな「商い」の体験に触れ、”いつか島津に戻ってきて、自分で商いをやってみよう!”と思えるような原体験の機会として、お店屋さん体験のイベントが企画されたのでした。「この地区は、実行のスピードが特長です!」と語られるとおり、京都府内で参考になるイベントを見てきたメンバーのアイデアを参考にして、すぐに実行に至りました。

仕入れも装飾も、お金の管理もやってみよう!

しましまベースでは「店長をやってみたい」と声を上げた子どもたちを対象に、どんなお店づくりを実現するか、内容や店構えの装飾のヒントとなるような勉強会を設けつつ開催をサポートしてきました。

しかし原動力は、子どもたちが自らやってみる意思と自由な発想です。

親御さんの協力を得ながら、

・どんなモノや体験を提供するか

・仕入れ値と売値はどうしよう?

・お店の装飾はどんな感じに仕上げるか

・使う道具も手作りしてみよう!  など、

企画、装飾、お金の管理まで、できるだけ自分たちで考えるきっかけになる取組みになりました。ここまで区長と紹介してきた三野さんですが、実は島津で”ウッドワークス三野”という木工所を営む経営者。イベントの開催にあたり、お店屋さんの装飾をしやすいようにと、屋台となる木枠をささっと作ってくれました。そして子供店長たちは、この木枠にダンボールや折り紙、風船を貼りながら、創意工夫してお店づくりに取り組みました。そして、仕入れや値付けも自分で取り組んでみて、どのお店もお年玉でもらうお小遣い程度の利益が出る結果となりました。

体験してもらうガチャコロも、YouTubeを見ながら段ボールでDIYしたそうです。

レジン液を使って、消毒液ケースやアクセサリーをデコレーションする体験のお店屋さんもありました。

二つあった射的屋さん、どちらも大人気で行列ができました。

子どもたちがお店屋さんづくりの参考になるように作った、占い屋さん。本格占いができるかどうかは怪しげですが、島津の活動を見に来られて「自分の地区でも、若い世代と一緒にまちづくりの活動を促したい」といった方の相談をじっくりお聞きするコーナーとなった模様です。

10年〜15年と続く活動を目指して

行動の速さが強みのしましまベースですが、まちづくりの成果については長い目で見て、育てるような気持ちで取り組んでいるところ。「はじめてのお店」の試みが10年、15年と長い期間でゆっくりと、じっくりと続いていくことを目指しています。

当日に配ったアンケートでは「うちの子はまだ小さいので、大きくなったら体験させてあげたいです」「(親御さん視点で)自分が子どもの頃にも、こんな体験をやってみたかった〜」といった感想が集まりました。

地区の方だけでなく、親御さんの協力あってこそ実現した今回の試み。まちづくりに携わるチームと子育て中のご家族が会話を交わす機会も増え「子育てする家族が住みたいと思えるまちに一歩近づいた試みとなりました。

“はじめてのお店プロジェクト”における今回の振り返りを踏まえて、これからも子どもたちに『商いの原体験』の機会を届けられるよう、丹後暮らし探求舎では、島津の地域のみなさんと共に挑戦していきます。